「グラスは全ての酒の伴侶」これは、80歳を超えても現役でカウンターの中に立ち続けた、銀座の名バーテンダー稲田春夫さんの言葉です。
この様に、どんなグラスで飲むかは、お酒の味わいに大きく影響してきます。
そこで今回は、よりビールを美味しく飲むために、ビールグラスの様々な種類や特徴について紹介したいと思います。
タンブラーグラス
底のある円柱形で、恐らく「コップ」といわれて、多くの人がイメージする形状のグラスです。
元々は動物の角をカットし、器にしていたのが起源で、先の尖った角は不安定で置くとすぐに倒れてしまうためタンブラー(倒れるもの)との名がつけられました。
その後、ガラス製のものが誕生し、底が作られるようになり、倒れなくなりましたが、名前だけは現在まで脈々と残っています。
一般家庭からレストランまで幅広く使用される、どちらかといえばカジュアルな雰囲気に合ったグラスで、気軽に使えるのが特徴。
近年ではガラスを極限まで薄くした「うすはり」と呼ばれるタンブラーグラスが口当たりのよさなどから人気となり、父の日などのプレゼントとしても常に人気上位に入っています。
脚付きグラス
ビール用には脚の短いタイプのものが販売されています。
ワイングラスやカクテルグラスのような、脚付きグラスは非日常的な雰囲気を演出する効果があることが知られています。脚付きビールグラスも主に一定レベル以上のレストランで使用される機会が多いグラスです。
この特性を理解して、特別な日の特別なビールを家庭でも脚付きのグラスで楽しめば、非日常的な雰囲気を演出するのにうってつけです。
陶器製グラス
陶器で作られたビールグラスも根強い人気があります。
このタイプの特徴は、陶器の表面にある細かな凹凸や気泡の効果で、普通にビールを注いだだけでクリーミーな泡立ちになる点にあります。
つまり、家にいながらにしてプロがビールサーバーから注いだような味わいを再現できるわけです。
また、ずっしりとした重みと手に持ったときの馴染みのよさを評価する声もあります。
ただ、陶器ですので当然ながら透明性はなく、ビールの色を楽しみたいという時にはあまり向いていません。
金属製のグラス
銅や錫などを使ったビールグラスです。
職人によって細かな細工を施されたものも多く、見た目にも高級感があり贈り物としても喜ばれています。
金属ですので熱伝導率がよく、冷えたビールを注げば即座にグラス全体が冷たくなり、手や唇からも涼しさを体感することが出来ます。
そのため、夏場の暑い季節などには最適のグラスといえるでしょう。
ただ、こちらも透明性はないので色を楽しみたいときには不向きです。
ワイングラス
ここ数年、日本のビールシーンでトレンドとなっているのが、アロマホップなどを使った香りに重点を置いたビールです。
これらの香りを存分に楽しむには、通常のグラスよりも、香りを楽しむために設計されたワイングラスを使うのがベスト。特に赤ワイン用の大きなチューリップ型のグラスだと最適です。
ワイングラスでビールを飲むと形状的にゴクゴクと一度に飲むスタイルになりにくく、どうしてもある程度の時間をかけて飲むようになります。
すると、その間の温度上昇による香りの変化も楽しむことが出来てしまうという、思わぬ効果も生まれます。
メーカー指定のグラスも
ビールを購入するとグラスが“おまけ”でついてくるなんて事はよくありますが、個性的なビールを生み出しているビール大国ベルギーでは、メーカーが自社のビールをより美味しく飲んでもらうために、オフィシャルグラスをリリースしています。
例えばデュベルは、ふわふわクリーミーな泡を存分に楽しんでもらえるように、かなり大き目のチューリップ型のグラスを出しています。
また、ヒューガルデンホワイトはかなり厚手のガラスを使ったタンブラーグラスをオフィシャルグラスとし、飲む直前にグラスに氷を入れてしっかり冷やしてから、ビールを注ぐようにとの手順まで推奨しているほど。ちなみにガラスが厚いのも、手の体温でビールが温くならないようにとの配慮だそうです。
この様にビールグラスといっても実に様々な形状や素材のものがあります。
缶から直接飲んだり、いつも同じグラスで飲むのも悪くはないですが、様々なタイプのグラスを活用して、その日の気分に合わせてビールを飲めば、より豊かなビールライフをおくれるのではないでしょうか。