ウイスキーを飲む時に、迷うことがいくつかあります。
その一つが、シングルモルトウイスキーとブレンデッドウイスキーの違いです。
どちらも同じウイスキーと呼ばれ、売り場に並んでいますが、どこが違うのでしょうか?
シングルモルトウイスキーとブレンデッドウイスキーの違いについて説明する前に知っておいて欲しい基礎知識
ウイスキーの定義には「大麦などの穀物を原材料とした蒸留酒」というものがあります。
このうち、大麦麦芽のみを原材料として玉ねぎのような形をしたポットスチルと呼ばれる単式蒸留器で蒸留されたウイスキーを『モルトウイスキー』と呼びます。
一方トウモロコシやライ麦などの穀物を原材料として連続式蒸留でつくられたものを『グレーンウイスキー』と呼びます。
連続式蒸留は効率がよく大量生産が可能です。ですが単式蒸留に比べ風味などは残りにくく、よりクリアなアルコールを蒸留するという特徴があります。
『モルトウイスキー』と『グレーンウイスキー』は、シングルモルトウイスキーとブレンデッドウイスキーの違いについて理解するための基礎となるものです。
シングルモルトウイスキーとは、ひとつの蒸留所でつくられたモルトウイスキーだけをボトリングしたもの
シングルモルトとも呼ばれている、シングルモルトウイスキー。
これは、ひとつの蒸留所でつくられたモルトウイスキーだけをボトリングしたウイスキーのことを意味しています。
そのため蒸留所ごとの個性を強烈に発揮し、その蒸留所の目指している方向性や味を表現してくれます。
ちなみに「シングルモルトウイスキー」の単語は、1963年にグレンフィディック蒸留所が初めて使用し、世界中に広まったものです。
シングルモルトの『シングルカスク』と『カスクストレングス』とは?
ウイスキーのラベルに「シングルカスク」と書かれているものがあります。
これは一つの樽のものだけをボトリングしたウイスキーです。
通常シングルモルトは、同じ蒸留所の樽をいくつも混ぜ合わせて、品質を均一化して出荷します。
しかし中には、飛び切り質の良い樽が生まれることがあります。そんな時には、その樽のものだけをボトリングして発売するわけです。
似たような言葉で「カスクストレングス」というものもあります。
こちらは樽で熟成されたそのままの度数で、加水を一切せずにボトリングしたウイスキーのことです。
殆どのウイスキーは加水を行ない、40度前後の目指すべき度数に調整してから出荷されるのですが、それを行なっていないので当然度数は高く、50度を超えるものも少なくありません。
言葉は似ていますがカスクストレンスグスの場合には、複数の樽を混ぜ合わせることもあるので、カスクストレンスグス=シングルカスクとはなりません。
様々な蒸留所のモルトウイスキーに、グレーンウイスキーを混ぜ合わせたのがブレンデッドウイスキー
様々な蒸留所のモルトウイスキーにグレーンウイスキーを混ぜ合わせたものが、ブレンデッドウイスキーです。
誕生したのは1853年のこと。量産が可能となったため、それまでスコットランドの地酒でしかなかったウイスキーが、急速に普及するきっかけとなりました。
数多くのモルト原酒をブレンダーが厳選し、目指す味に組み立てるのが特徴で、ブレンデッドスコッチの代表格バランタインには40種類もの原酒が使われています。
ちなみにラベルに12年と書かれている場合、モルトウイスキーはもちろん、グレーンウイスキーも12年以上熟成させたものを使用しなくてはなりません。
間違っても色々なモルト原酒を、大量生産したアルコールで割っただけという、単純で安っぽいウイスキーではありません。
モルトvs.ブレンデッドの4年戦争
ブレンデッドウイスキーが登場し、一気に市場を席巻すると、それに焦った蒸留所は「ブレンデッドウイスキーはウイスキーではない」と訴え、1905年から4年にわたる法廷論争が行なわれました。
大論争を巻きこしましたが、1909年に「ブレンデッドもウイスキーである」との判断が下され、この瞬間から晴れてブレンデッドも正式なウイスキーの仲間入りを果たし、さらなる市場拡大をすることとなります。
目指す方向性が違う シングルモルトは個性を楽しみ、ブレンデットは調和を楽しむ
シングルモルトとブレンデッド、ともすればどちらが上かといった不毛な議論も起こってしまいます。
シングルモルトは個性を楽しむべきもので、いわばソリストやソロアーティストのような存在。一方のブレンデッドは個性あふれる原酒をまとめたオーケストラやアイドルグループのようなものです。
どちらが上かとは決められないですよね。それぞれに良さがあり、楽しみ方も違ってきます。
どちらが上とかではなく目指す地平線が異なっており、そのお陰でよりウイスキーの世界が広がると考えた方が正しいのではないでしょうか。
ウイスキーを飲み始めるときに疑問に思う、シングルモルトとブレンデッドの違い。
両者の違いをしっかりと覚えて飲むことで、よりウイスキーの世界を深く楽しめるはずです。