ウイスキーファンならば一度は訪れたい島がスコットランドにあります。
それが淡路島ほどの大きさながら8つの蒸留所が集まっていて、いずれもピート香の強い個性的なモルトウイスキーを生み出すアイラ島です。

個性がつよいウイスキーの代表格『アイラモルト』
はまる人ははまるから1度は飲んでみて!
アイラモルトにまつわる笑い話で、BARで何も知らずに初めてアイラモルトを頼んだ男の話があります。
すこしご紹介してみましょう。
「出てきたウイスキーを飲んでみた。
なんだか・・・どう考えても消毒液のような強い薬品臭がする。
異物混入か?
もしくは傷んだウイスキーではないかと思いバーテンダーに伝えようと思って隣を見た。すると他の客は同じボトルから注がれたウイスキーを美味しそうに飲んでいるではないか。
ひょっとして自分のグラスにだけ細工をされたのだろうか。
自分は招かれざる客だったのだろうかと悩んでしまった」
こんなエピソードが残るほど、アイラモルトには猛烈な個性があります。
その個性の正体はスコッチ独特の香りの元となるピートです。
スコッチの中でも特に個性あふれるアイラモルトの魅力に迫ります。
好き嫌いは別れるけど一度は飲んでみて! はまる人は物凄くはまる!!
アイラ島は島全体がピートと呼ばれる泥炭で覆われています。
そのため降り注いだ雨は、分厚いピート層を通り川となって流れ出てきます。仕込みに使う川の水自体が、ピートの香りや成分がしっかりと移った茶色く変色した状態になっています。
さらに8つの蒸留所のうち7つの蒸留所が海岸沿いにあります。
そのため潮風をうけながら貯蔵庫の中で熟成されたモルトウイスキーには、磯臭さと表現してもいい潮っぽさが残っています。
薬品のような香りと、何故ウイスキーからこんな味がするのか分からない磯臭さと潮っぽさ。
こんな表現をすると、とても美味しいウイスキーには思えません。ですが個性のあるものほどハマると代わりがなく、どんどん好きになってしまうものです。
世界には、この様な個性的なアイラモルトに魅了された人が多数おり、アイラ島は多くのウイスキーファンが生涯一度は訪れたいスコッチウイスキーの聖地となっているのです。
ウイスキー初心者であっても、最初は飲みやすい銘柄から入り、どこかのタイミングでアイラモルトに接することでしょう。
最初は「もう二度と飲まない」と思っても、しばらくするとあのフックの強さが気になりだして、また飲んでしまう。そんな事を繰り返すうちに熱狂的なアイラファンになってしまう人が後を絶ちません。
個性的なアイラモルトの代表3銘柄
8つの蒸留所うち、どこの店に行っても飲んだり購入したり出来る代表的銘柄はアードベッグ・ラフロイグ・ボウモアの3銘柄です。
ちなみにアードベッグが最もクセが強く、ボウモアはアイラモルトでは中間的な味わいなため入門編にオススメです。
ラフロイグは消毒液のような匂いが特徴で、事実禁酒法時代のアメリカでは「こんな匂いのもの飲む人いますか?消毒液ですよ」と誤魔化して流通していたほどです。
ただラフロイグはチャールズ皇太子が愛飲するなど、シングルモルトでは初めてとなる英国王室御用達の名誉を賜っています。
強烈個性のアイラモルトウイスキーを楽しむ飲み方とは?
ウイスキーの飲み方は、飲み手の自由であるというのが原則です。
ただアイラモルトの場合、香りが特徴のスコッチの中でも特に香りに個性がある銘柄が多いので、香りを抑えつけるロックで飲むのはもったいないとされることが多いです。
ストレートやトゥワイスアップといった飲み方もいいですが、意外にもソーダ割り(ハイボール)にすると、独特のピート香がいい感じのフックとしてさらに立ち上がって新しい美味しさを見せてくれます。
夏場などストレートなどが重くなる季節には、アイラモルトのハイボールもオススメです。
読んで魅了されるアイラモルト「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」(村上春樹 著)
読むとアイラモルトをどうしても飲んでみたくなると、ウイスキーファンから支持を受ける一冊があります。
それが「もし僕らのことばがウィスキーであったなら」(村上春樹・新潮文庫)です。
この本は、作家の村上春樹さんがアイラ島とアイルランドを旅した様子を綴った旅行記です。この本を飲んでいると行間からアイラモルトの香りが漂ってくる感じがして、思わずアイラモルトを飲まずにはいられません。
本を読みながらアイラモルトをゆっくりと傾けるというのも、贅沢な時間の過ごし方です。
スコッチファン垂涎のアイラモルトは、ウイスキーを飲みなれない初心者のうちは近寄りがたい印象があるかもしれません。
しかし、この魅力に気付くとアイラモルト以外は飲めないなんて熱狂的なファンになってしまいます。一度であきらめず、自身のウイスキー経験値を積み重ねるたびに飲んでみると、新たな発見が出来るのではないでしょうか。