ナゴルの不思議!バンジージャンプのモデルとなった儀礼

Bungee jumping - retro style photo

皆さんのほとんどは、バンジージャンプをご存知かと思います。1979年4月1日にニュージーランドで誕生したバンジージャンプは、あっという間に世界中に広まり、スリルを楽しむアトラクションとしてすっかり定着しました。

しかし、バンジージャンプは全くのゼロから生まれたわけではありません。バンジージャンプには「元ネタ」となる儀礼が存在します。それはいったい、どんな儀礼なのでしょうか?

ナゴル儀礼

ナゴル-バンジージャンプのモデルとなった儀礼用
バンジージャンプのモデルになったのは、南太平洋の島国、バヌアツ共和国のペンテコスト島で行われている、「ナゴル」と呼ばれる伝統的儀礼です。この儀礼では、高さ30mを超える木製のやぐらから、足に蔓を結び付けた男たちが、次々と弧を描くようにして地面へ真っ逆さまにダイブします。まさにバンジージャンプそのものです。

しかしナゴルは、単に男たちが高所からダイブするだけのアトラクションではありません。「儀礼」である以上、ナゴルにはちゃんとした起源があり、そして意味があります。

ナゴル儀礼の起源

ナゴルの起源は、ある夫婦の物語として語られています。昔々、夫のあまりに過剰な性的要求に困り果てた妻が、森の木の上に隠れてしまいました。怒った夫が木の上まで追いかけてきたので、妻は足首に蔓を巻き付け、木から飛び降りました。妻の後を追って、夫も木から飛び降りましたが、蔓を巻き付けていなかったので、そのまま地面にたたきつけられて死んでしまいました。

このエピソードが、後にナゴルへと発展していったとされています。

ナゴル儀礼とヤムイモ

高所から飛び降りる男たちの勇敢さに注目が集まるせいか、ナゴルはしばしば、大人になるための通過儀礼として紹介されています。儀礼に臨む若者たちは、死の危険に果敢に立ち向かい、見事にそれを乗り越えることで、晴れて大人の仲間入りを果たす、という具合です。

しかしこれは正確ではありません。ナゴルは通過儀礼ではなく、ペンテコスト島の人たちの主食であるヤムイモの生育と密接に結びついた儀礼です。この儀礼が行われるのは毎年4月から5月にかけてですが、この時期はちょうど、ヤムイモの収穫期の直後に当たります。その年に収穫されたヤムイモの出来が、ナゴルにおけるダイブの安全性を保障し、またダイブの成功が翌年のヤムイモの豊作をもたらすのです。

ナゴル儀礼の観光化と変容

ナゴルはもともと、ペンテコスト島のブンラップ集落周辺でのみ行われていました。しかし観光化の波がペンテコスト島に押し寄せると、ナゴルは大きな変容を遂げました。島のあちこちで、ナゴルが行われるようになったのです。

1950年代にナゴルが欧米のメディアで紹介されると、ナゴルを見に観光客がブンラップ周辺を訪れるようになりました。これに目を付けたツアー会社が、観光客のためにナゴル儀礼を開くよう、ブンラップの人たちに働きかけるようになりました。しかしこれに難色を示したブンラップの人たちは、妥協案として、ブンラップではない別の場所で、観光客向けのナゴルを行うことにしたのです。1960年代末のことでした。

これを皮切りに、ブンラップとは別の集落もナゴルを行うようになりました。近年では、ナゴルの季節である4〜5月になると、ツアー会社とタイアップしたナゴルが、ペンテコスト島の各地で毎週のように開かれるようになっています。

ナゴル儀礼と「真の伝統」

ナゴルの観光化という現実を前にして、ブンラップの人たちは、自分たちのナゴルこそが「真の伝統」だと言います。自分たちのナゴルは観光客向けのナゴルとは違うのだという意思表示として、ブンラップ周辺のナゴルは観光客に開放されていません。

しかし観光客向けのナゴルが始まって以降、ナゴルでは伝統的な雰囲気がとても大事にされるようになりました。観光化以前のブンラップのナゴルでは、Tシャツに短パンを着用した男たちがダイブしていました。しかし観光化以後は、「真の伝統」を内外にアピールするために、男たちは、股間を隠すペニスラッパーに装身具という、昔ながらの格好でダイブするようになったのです。

ペンテコスト島の人たちにとって、ナゴルはもはや単なる年中儀礼ではありません。海外に向けて自分たちの「真の伝統」を披露するイベントであると同時に、自分たちの「真の伝統」が何であるかを見つめなおし、そして創造する、重要な機会にもなっているのです。

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