iPhoneの故郷~富士康深圳工場~を訪ねる

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深圳経済特区の主要産業はいわずもがなの製造業。ぬいぐるみ、温風機、テレビ、そしてここ数年ではモバイル機器をはじめとする電子機器の一大生産拠点として名をはせている。筆者はiPhoneを使っているが、自分の使ってきたiPhoneの旧型(iPhone 3G)が作られた、深圳の「富士康(FOXCONN)」工場のある場所を訪れてみたいと思い、友人を伴って現地へ向かった。

FOXCONNとは

「鴻海科技集団」または「富士康科技集団」、英語名でFOXCONN Technology Groupという台湾資本の企業がある。コンピュータ関連機器の受託生産(いわゆるEMS)の世界最大手だ。その中国における最大の生産拠点がここ深圳に設けられている。

このFOXCONNの工場のあるエリア自体が一つの中規模都市となっており、全体で40万人もの職員が働いているという。1つの会社だけで、1つの街が出来てしまうと言う。豊田市のトヨタ工場関連で10万人ほどだというから、その四倍の従業員が集結している、ちょっと想像しただけでも恐ろしいほどである。

数年前の話であるが、FOXCONNで受け折るアップル。iPodシリーズの生産ラインの労働があまりにもノルマがきつく、公式には一日12時間労働だといいながら、実際は15時間以上を要求され、従業員が耐え切れずに飛び降り自殺をしたと言う話は記憶に新しい。報道で知られているだけでもこの会社での労働者の自殺は十数名にも上る。また当然ながら秘密保持には大変厳しく、FOXCONNの工場を無関係の人間がふらりと見学に入ることは絶対に出来ない。工場に出入りする従業員は専用のIDカードの使用が義務付けられ、出入りは厳しく監視され、産業スパイ入り込む隙は全くない。

はしゃぐ経営コンサルタントとFOXCONN工場の町へ

FOXCONN工場に入ることは出来ないまでも、世界を震撼させたiPhoneが生まれた場所を是非歩いてみたいと思い、市内からアクセスすることにした。現在ではすでにiPhoneの生産拠点はここではなく、河南省に移っているが、初代からiPhone4までの華々しい時代は、まさにこの深圳・龍華工場で作られていた。羅湖駅からは北西に約15キロの位置にある。地下鉄、バスで行くことも可能だが、今回は大阪で経営コンサルタントをしている友人を伴っていたので、市中心部からタクシーを拾って向かうことにした。

「言っとくけど、工場の見学が出来るわけじゃないからね。工場周辺を見るだけだから」と私が念を押したが、友人は「わかってるよ。ああ楽しみだなあ。生産効率化のファクターってさ…」と、まるでFOXCONNの生産ラインにアップル製品が流れているのを見られる夢想をしているとしか思えない生返事がかえってきた。有りえませんって!看板見て、散歩して飯食って帰るだけですから!

この友人は「香港から中国側(深圳)に、歩いて国境を渡った」という時点でハイテンションになっていた。正確に言うと国境ではないのだが…。工場地帯に行くのにこんなに興奮してる男を見るのは初めてである。そもそも紹介状もなければ企業機密保持で世界的に有名な会社なのだから…と道中何度も話したが、無駄のようだった。

羅湖駅の前から客待ちをしているタクシーを選び、乗り込んだ。深圳のタクシーはかつては酷いものだったが、今は大変快適だ。昔は、運転手のマナーもひどくガラも悪いし、中国製造のVW車に交じって、おそらくは旧ソ連から流れてきたロシア製の大型セダン「ヴォルガ」のポンコツがタクシーとして使われていた。さすがに今ではヴォルガタクシーは引退してしまったようだ。

さてタクシーを飛ばしてFOXCONNの方へ行く。道すがら、運ちゃんに広東語で話しかけてみる。「広東語わからん」と一蹴された。他の省から来ているので、地元の「方言」はわからないという。それでは、と標準中国語で話しかける。「富士康(中国語でのFOXCONNの名前)には、アップルの人はよく来るの?」運ちゃんは笑って「何で俺に聞く?」と問い返してくる。「だって富士康はアップルのおかかえ工場なんでしょ?外国人ビジネスマンがしょっちゅうタクシーでこうやって工場に行くのかと思って」 運転手は「そんなえらい人はタクシーなんか乗らないで専用のリムジンで行くんじゃないのかい?」と笑って返した。

ここがお前の生まれ故郷だよ…

そうこうしているうちに目的の「龍華」地区に到着した。友人は「富士康」という文字が街のあちこちにあるのを見て興奮しまくっている。工場の正門とおぼしきあたりに来てたたずむ。巨大でもあるし、ものものしい警備体制を感じた。しばらく所在なげにFOXCONNの入り口の周りをウロウロしていると警備員らしき人物が近づいてきて、友人になにか中国語で言っている。どうも彼が写真を撮ろうとしたのを見咎めたのだ。アップル社の機密保持のうるささは有名だが、それにしても公道(のはずだ)に立って写真を撮るぐらいでピリピリするとは、工場敷地内の警備の厳しさは推して知るべし。私は普段サブ電話機として今でも使っているiPhone 3Gを握りしめ、「お前の生まれた場所は、ここだぞ!里帰りしたな」と心の中で語りかけてやった。

筆者の当初の目的通り、そして友人の夢想とはまったく異なる、工場周辺のそぞろ歩きを始めることとなった。工場の周辺には多くの客入りを当て込んで、沢山の商店が軒を連ねている。飲食店はもとより、携帯電話のショップ、100円ショップのような雑貨店、個人経営のネイルサロン、ゲームセンター、ありとあらゆる業種がこの工場の労働人口に合わせて集結したという感じだ。

筆者はかつて深セン工場を持つ企業にいたことがあり、当時の工場スタッフは中国各地からさまざまなバックグラウンドを持つ人々だったことを覚えている。当然ながら「富士康人(FOXCONN職員)」もきっと雲南省、湖南省、福建省などさまざまな地方からこの工場に集まっているのだろう。

工場門前町の提供するサービスやいかに

友人と二人で入った小さな店は、雲南省の麺を食べさせる所だった。ビールも頼んで軽く食事しながら、店員さんに「FOXCONNの給料っていいの?」と聞いてみた。すると「そりゃ悪くないでしょ、大企業だから。でも仕事漬けで大変でしょう」との答え。家族を養うために出稼ぎでここまでやってきて、文字通り身を粉にして働く「21世紀の女工哀史~中国版社畜」が数十万人もここにいるということか…。

ビールでいい気分になった友人がニヤニヤと「ね、なんかちょっとアッチのほうの店とかないの?」と聞いてきた。アッチ?ああ、色っぽいほうか…。アップル製品生産ラインの効率化のファクターを知りに来たんじゃなかったんかい!

ほろ酔いで中国に来ているという警戒心もすっかり解けてしまった友人にせっつかれ、FOXCONN門前町の数ある店舗の並びにあった「足マツサーヅ♡」的なちょっとだけ怪しげな店に男二人で入った。時間も無かったので選ぶ余裕がなかったから「ベイマックスみたいな色白おばちゃんが出てきても恨むなよ?」と念を押しておいたが、出迎えてくれたのはそこそこ可愛らしい?20代くらいの女子達だった。いかがわしいサービスは無しで、ちゃんとした足つぼマッサージを受けてきた。友人は覚えたての中国語で「ニイハオ!ニー、ピャオリャン♡(あなた綺麗ね!)」を連発し、マッサージ嬢さんたちの失笑を受けていた。まあそれでも経営コンサルタント氏的には大満足の「現地視察」だったようである。

アクセス:

日本各地の空港から香港国際空港(中国・香港特別行政区)に入り、タクシーまたは鉄道で「上水(Sheung Shui)」駅へ。この駅から一つ先の終着駅「羅湖(Lo Wu)」駅でパスポートチェックを経て、徒歩で境界線を越えて中国・深圳経済特別区に入る。中国側羅湖駅前からタクシーで約20分。

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