世界の意外な食習慣!?ニューギニアの伝統的なジュゴン漁

Sea cow

「人魚のモデル」として一般に知られているジュゴンですが、それを食べるなんて私たちにはちょっと考えられないことです。しかしそうした「常識」とは裏腹に、ジュゴンは有史以前より食料として利用されてきました。ですから、現在でもジュゴンを食べている人たちがいるとしても、決して不思議ではありません。

そもそもジュゴンとは

ジュゴンはカイギュウ目ジュゴン属の哺乳類で、ゾウと共通の祖先を持ちます。主に南太平洋からインド洋の熱帯及び亜熱帯の浅海域に生息しており、沖縄がジュゴン生息の北限となっています。ジュゴンの体長は2.4m~3.0m、体重は250~400㎏、寿命は50~70年です。ジュゴンの餌は海草で、1日に体重の10%以上を食べる「大食漢」として知られています。

 

ニューギニアの伝統!?ジュゴン漁

パプアニューギニア西州・ダルー島に住むキワイの人々の間では、伝統的にジュゴン漁が行われています。ジュゴンはキワイ語で「モモロ」と呼ばれます。

ジュゴン漁の方法は二通りありますが、いずれもモリを使います。一つは、サンゴ礁のリーフ内にやぐらを設けて、夜間にその上でジュゴンを待ち伏せし、そこからモリを打つ方法。もう一つは、昼間にカヌーの上からモリを打つ方法です。ジュゴンを見つけると、モリ打ちは渾身の力を込めて、ジュゴンにモリを打ち込みます。ジュゴンは逃げようとしますが、モリのロープの一端はカヌーに繋いであるので心配はありません。カヌーから男たちが海へと飛び込み、最後は尾ビレにロープをかけて捕獲するのです。

ジュゴン漁に関わるタブー

ジュゴン漁には様々なタブーがあります。一つ目は音やにおいに関するタブーです。夫が漁に行っている間、妻は家を掃除したり、ケンカしたり、不要な音を立たりしてはいけません。また漁に出る者は、村に戻るまで話をしてはいけません。なぜなら、音に気付いたジュゴンが逃げてしまうからです。さらには、夫は出漁前に妻と寝てはいけませんし、妻が妊娠している者は漁に出ること自体が禁止です。なぜなら、女性のにおいがしてジュゴンに気付かれてしまうからです。

二つ目は、出漁する者への接し方にまつわるタブーです。漁に行かない者は、漁に出ようとする者に声を掛けてはいけませんし、見てもいけません。なぜなら、漁に行かない者の魂が漁について行ってしまい、ジュゴンを遠ざけてしまうからです。

三つ目は食物に関するタブーです。モリを使う漁に出る前は、テベという魚を食べてはいけません。この魚は脂がのっているので、これを食べた後では、手元が油で滑ってしまうからです。

 

ジュゴン肉の分配と調理

捕らえたジュゴンの肉は、漁に出た人たちが独占するのではなく、各世帯に平等に分配されます。ただし、最もおいしいとされる腹側の皮つき肉だけは、出漁した者だけで分配されます。

もっともポピュラーな調理法は素焼きです。肉のブロックをゆがいて、その後、遠火でじっくり焼くのです。焼き上がった肉は、そのまま食べるか塩をつけて食べるのですが、その味は「豚のヒレ肉そっくり」だそうです。腹側の皮つき肉の場合は、先に肉の部分を食べます。脂肪分が多い皮の部分は、たき火の煙が当たる家屋の梁に挟んで1~2週間寝かせてから、火であぶって食べます。寝かせておくと、うま味が増すのだそうです。

そのほか、肉を小片に切ってサゴヤシでんぷんと一緒に調理した「モモロドウ」、小腸に肉の細片とサゴヤシでんぷんを詰めたソーセージ「アリアリトゥブル」などがあります。また最近では、細かく切った肉片を玉ねぎと一緒に煮て、カレーパウダーやグレービーソースの粉末で味付けしたシチューも好まれています。

 

ジュゴン漁の現状

伝統的なジュゴン漁を行ってきたキワイの人たちですが、1960年頃になると、エンジン付きボートや網を使ったジュゴン漁が行われるようになりました。ボートや網の導入によってジュゴンの捕獲効率は飛躍的に高まったのですが、それはそのまま乱獲へと繋がりました。乱獲に拍車をかけたのは、ジュゴンの肉の商品化です。1950年代に、ダルーの町でジュゴン肉が取引されるようになると、島の人々は、現金獲得のためにジュゴンを売りさばくようになったのです。

乱獲の影響で、1990年代に入るとジュゴンはほとんど捕れなくなってしまいました。そこでパプアニューギニア政府は、伝統的な食用目的のジュゴン漁のみを認め、ボートや網を使った商業目的のジュゴン漁を禁止しました。しかし密漁は後を絶ちません。また欧米の環境保護団体からは、「ジュゴン漁は残酷だ」として全面禁止を訴える声が上がっています。

このままジュゴンは捕り尽されてしまうのか。それともジュゴン漁が全面的に禁止されてしまうのか。伝統的なジュゴン漁は、存亡の危機にあると言えるでしょう。

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